リノベーションの魅力は、既存の住宅を自分の好きなように改装して快適に暮らせるところです。けれども築年数が経っているので、リノベーションをしてもいつまで住めるのか気になります。そんなときに知っておくと便利な「法定耐用年数」について紹介しましょう。

リノベーションの際に知っておきたい!法定耐用年数とは?

「法定耐用年数」とは物が資産として利用できる年数を表し、法人や個人事業主が「減価償却」を行うときの計算に使われます。例えば事務所や店舗、賃貸用のアパートやマンションなどです。

 

本来、法人や個人事業主が事業のために購入したものは経費として処理できます。収入が多くても経費が多ければ所得金額は少なく計上できるため税金は安くなるでしょう。特に取得原価が高いものほど、その効果は大きくなります。

 

けれども建物や車など長期に渡って利益を生み出せる物は経費ではなく資産として計上し、利用できる期間に応じて経費処理するのが適切と考えられています。これが減価償却であり、法律で定められた利用できる期間が法定耐用年数です。

 

建物の場合、法定耐用年数は構造や用途によって異なります。例えば木造は住宅として使うなら22年ですが、事務所用は24年です。鉄筋コンクリート製はそれぞれ47年と50年になります(※1)。

 

一方、事業とは無関係の住宅でも売却時の譲渡所得を計算する際に、法定耐用年数を使用して減価償却します。その場合の法定耐用年数は1.5倍になるため木造で33年(22年×1.5)、鉄筋コンクリート造は70年(47年×1.5)です(※2)。

 

ちなみに実際の寿命は早稲田大学が2005年に調査したデータを財務省が公開しています(※3)。マンションやアパートなどの集合住宅なら木造は44年、鉄筋コンクリート造は45年です。戸建でもそれぞれ54年、57年とそれほど変わりません。ただしこれは残存率が50%になった年数であり、それ以上の年数が経っても問題なく住める住宅はたくさんあります。

リノベーションで住宅の寿命を延ばせる

長持ちする住宅は計画的な修繕が行われ、手入れも行き届いています。リノベーションも住宅の寿命を延ばせる手段の一つです。ただし単に間取りや内装を変更するだけではダメで、耐震性や断熱効果を高めるなど長持ちさせる工事をしなければいけません。

 

例えば現在の耐震基準が施行されたのは19816月です。それ以降に建築申請しているなら問題ありませんが、それ以前の住宅であれば耐久性を高めるリノベーションが必要です。基礎に鉄筋を入れたり、壁を補強したり、梁や柱を追加したり、金具で留めたりします。

 

住宅の断熱化が住宅金融公庫の融資条件に加わったのは1988年です。それ以前の住宅は断熱効果を高めるリノベーションをしましょう。壁や床、天井を剥がさなければいけないため工事の規模は大きくなりますが、住宅が傷みにくくなり快適に暮らせるようになります。

 

住宅の寿命が長くなっても住み心地が良くないとリノベーションの意味がありません。やはり間取りや設備、内装にもこだわりたいものです。たとえ費用が高額になり新築と大差なくなっても、元を取れるくらい長く安心して暮らせるようになるでしょう。

 

ただし事業と無関係の住宅はリノベーションをしても法定耐用年数は変わらず、あくまでもその住宅が建築された時点からカウントされます。

リノベーション費用の減価償却と法定耐用年数

事業用の物件をリノベーションする場合、費用が減価償却の対象になる可能性があります。修繕費として同じ年度に一括で処理したくても認められないかもしれません。特に規模が小さいマンションの家主にとっては大きな問題です。

 

例えば傷んだ壁紙や床を補修したり張り替えたりするくらいなら、原状回復にあたるので修繕費になるでしょう。一方、内装や設備を刷新したり間取りを変更したりするのは、物件の価値を高めて寿命を長くするため、新たに資産を取得したとみなされます。いわゆる「資本的支出」です。

 

判定基準はいくつもあるため、税の専門家である税理士に相談したほうが無難でしょう。一般的にリノベーションにかけた金額が20万円未満ならば修繕費にできます。

 

もし資本的支出とみなされたら、リノベーションの法定耐用年数は新築の建築物と同じです。賃貸マンションなら木造で22年、鉄筋コンクリート造で47年です。たとえ建築から20年後にリノベーションしても法定耐用年数はそれぞれ2年や27年にはなりません。かかった費用は法定耐用年数で割った分だけ毎年減価償却を行います。

 

ただしリノベーションにかかった費用が、物件の再取得額(同じ物件を新たに建てる際にかかる金額)の50%を下回る場合は法定耐用年数を短縮できます。計算式は以下のとおりです。

 

(建物の法定耐用年数-築年数)+築年数×0.2

 

例えば法定耐用年数が47年ある鉄筋コンクリート造の建物を、築20年後に再取得価額の50%以下でリノベーションした場合は「(47年-20年)+20年×0.2」となり、31年で減価償却できます。ちなみに法定耐用年数を既に消化している物件をリノベーションした場合、減価償却にかかる年数は「法定耐用年数×0.2」です。

まとめ

法定耐用年数は減価償却するときに使われるもので、実際の寿命とは関係ありません。事業用のリノベーションでも法定耐用年数が適用されて減価償却する場合があります。

 

ただし事業とは無関係の住宅なら、参考程度に覚えておくだけで十分でしょう。むしろリノベーションとその後のメンテナンスによって法定耐用年数よりも長く寿命を延ばせます。

 

1https://www.keisan.nta.go.jp/survey/publish/34255/faq/34311/faq_34354.php

2http://www.nta.go.jp/taxanswer/joto/3261.htm

3https://www.mof.go.jp/national_property/councils/pre/shiryou/221021_05.pdf

4https://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5404.htm

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WRITER
安井 俊満
マーケティング

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